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この春、神奈川の高校野球界をもっとも沸かせた相洋。
準々決勝で横浜、準決勝で東海大相模を下し、23年ぶりに出場した春季関東大会では作新学院にサヨナラ勝ち。ビッグネームに対しても、気持ちで引くことなく、粘り強く、泥臭く戦い抜いた。
狙うは、創部初の甲子園出場だ。
【初めて口にした「甲子園を目指そう」】
昨秋の神奈川大会、相洋は準々決勝で日大藤沢に0対2で敗戦。初回、8回ともに内野陣の守りのミスが失点につながり、打線は4安打と沈黙した。
小田原市内のグラウンドに戻ってからのミーティングで、OBでもある高橋伸明監督は素直な気持ちを口にした。「ベスト8に入っても、何も残らないな。上を目指そう。甲子園を目指そう」 2012年に監督に就任して以降、心の底から「甲子園を目指そう」と言っ
たのはこのときが初めてだったという。「まずは、ベスト8。その舞台に立たなければ、上は見えてこないと思っていた10年間がありました。準々決勝に行くことで、少し安心できた気持ちもありました。でも、日藤に負けたときには、何も残らなかったんです。ベスト
8では満足できない。私にとって初めての感情で、『甲子園』を口に出すタイミングだと思いました」
2019年秋にはベスト4、2020年夏の代替大会では準優勝。頂点が見える位置に迫っていたが、「甲子園」は口にしていなかった。本当の意味で、まだ見えていなかったからだ。 就任10年、高橋監督が口癖のように言い続けているのが、「横浜、相模(東海大相模)に勝つ」だ。「甲子園」を掲げるより、2強をターゲットにしたほうが、目標がリアルになる。 中学生のリクルートでも、「うちは横浜、相模に勝つためにやっている。それが一番のエネルギー」とストレートに伝える。その熱い思いに惹かれ、強者を倒すことに魅力を感じる中学生が集まる流れができていた。
現在の3年生が入学するタイミングで野球部の寮ができ、通学に時間がかかる遠方の生徒も受け入れられるようになった。キャプテンで正捕手の渡邊怜斗とライトの本多立幹は横浜市、センターの土屋晴聖は川崎市出身で、中学時代には日本一を果たしている。覚悟を持って相洋に入学し、仲間と切磋琢磨しながら心身を磨いてきた。 渡邊は、中3時を振り返る。「高橋監督から、『横浜、相模を倒そう』と、もう何度も何度も言われました」 入学前から、このメンタリティーが植えつけられている。「今の3年生にとって大きかったのは、
夏の代替大会で先輩たちが準優勝を果たしたことです。今まではベスト8やベスト4で終わっていたのが、決勝に行った。当然、『自分たちは先輩を超えたい』と、欲深くなります。今までの相洋と何が違うかと言えば、この〝入り〞が一番の違いだと私は思っています」
この土台があるからこそ、横浜、東海大相模の先にある「甲子園」を見据えることができたと言える。
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